Verruckt?
家には子供が待っている。
聡明な兄と、かわいい妹。
男女の双子。
本当の子供ではないけれど、私のたった二人の家族。
仕事が終わり、夕食の材料も調達した。
あの子達はいい子にしていただろうか。
やっと会える。そう考えるだけでスキップしてしまいそう。
だけど、それをぐっと押さえた。
でも、顔はにこやかだったかも。
うれしいのだから仕方がない。
退屈な仕事から解放され、やっと子供に会えるというのに、うれしくない親なんていないはず。
健気で親思いの優しい子なら、なおさらだ。
「ただいま」
ドアを開けながら、二人に声をかける。
言い含めてあるから、この時間帯に外に出ることはないはず。
もう外は暗いから、そんな危険なことはさせられない。
反応はすぐにあった。
二つの足音が、居間から向かってくる。
「お帰りなさい!」
押し倒さんばかりの勢いで、二人が突進してきた。
ニコニコ笑いながら。
なんてかわいい子達だろう。
「ただいま。ヤン、ルッテ」
ひとりずつ抱きしめ、頭をなでる。
さらさらの髪は少し冷たくて、それが気持ちいい。
二人の額にキスをしてた。
ヤンもルッテも、くすぐったそうな顔をしている。
その様子に、クスっと自然に笑みがこぼれた。
「それじゃあ、晩御飯の用意するからね」
二人の体を離し、キッチンへ向かおうとする。
「お母さん、ご飯は僕たちが用意したよ」
そんな私の袖をつかみ、ヤンが言う。
「いつも忙しいでしょ? 私たち頑張ったわ」
ルッテが引き継いで、言葉を続ける。
二人ともかわいらしい笑顔を浮かべていた。
『食べてくれるよね?』
二人の声が重なる。
なんていい子たちなんだろう!
食べないなんて選択肢はない。
一生懸命作ってくれたのだから。
私が用意した夕食の材料が無駄になったけど、そんなことは些細な問題だ。
どこででも、簡単に手に入るものだし。
早く早く、と袖をつかんでせかす。
そんなに急がなくても、ご飯はもう逃げないのに。
食卓には、見慣れたものが並んでいた。
どこにでもあって。
簡単に手に入る。
今、窓の外を見ても、たくさん歩いている食材。
シチューもローストも。
ああ、おいしそう。